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高齢者が多くなったわが国では、認知症は重要な病気となりました。認知症は患者自身の問題であるばかりではなく、家族や地域社会にとっても大きな問題であります。そこで、認知症を正しく理解することが必要になってきました。
平成16年12月24日、厚生労働省は「痴呆」の名称を「認知症」と改めることを決定しました。ここでも痴呆に代わって認知症という言葉を用いることにしました。
現時点で、認知症の患者さんは全国で160万人いると推測されています。この数字は65歳以上の人の約7%に当たるといわれています。ある統計によりますと、認知症の4〜5割がアルツハイマー病、2〜3割が脳血管性の認知症と考えられています。以前は、日本では脳血管性の認知症が多いと考えられてきましたが、最近ではアルツハイマー病の割合が多くなっています。
認知症は、その頻度からアルツハイマー病、レビー小体型痴呆、脳血管性痴呆、その他の痴呆に分類されます。アルツハイマー病は加齢に伴い老人斑、アルツハイマー神経原線維変化が脳に現れ、神経細胞が障害されて脳萎縮を起こします。レビー小体型痴呆はパーキンソン病でも現れるレビー小体が脳で広範現れ、脳萎縮を起こします。脳血管性痴呆の多くは、梗塞により脳の神経細胞や線維が障害されて起こります。
その他の認知症を来す病気としては、甲状腺機能低下、ビタミンB群欠乏症、高カルシウム血症、神経梅毒、HIV感染症、薬物や毒物、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、良性脳腫瘍、前頭側頭型痴呆、進行性核上麻痺、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病などがあります。その他の痴呆は比較的少ないのですが、予防・治療可能な痴呆が含まれていますので見逃さないことが大切です。
認知症の原因となる病気の中で、外科的治療の対象となるものとして、正常圧水頭症(3徴候として痴呆、歩行障害、失禁を呈します)、慢性硬膜下血腫(老人の軽微な頭部外傷後には常に念頭に置く必要があります)、脳腫瘍(老人の前頭葉腫瘍、特に髄膜腫)の3つの代表的な病気があります。 記憶障害は認知症の中心症状ですが、それに加えて言語障害(失語)、認識障害(失認)、動作障害(失行)、見当識障害や妄想・幻覚、焦燥、不安、徘徊などの行動・心理症状が現れます。通常、記憶障害のみの病気を軽度認知機能障害として認知症とは区別しますが、鑑別することは必ずしも容易でありません。また、高齢者のうつ病(うつ病性仮性痴呆)では、認知症のような症状がみられることがあり、認知症と間違わないよう注意が必要です。
一般的には「長谷川式簡易知能検査」やミニメンタル・ステート(MMSE)などの知能検査が行われますが、どのような病気で起こったかを区別することは重要です。アルツハイマー病は2年程度かけて徐々に進行しますが、脳血管性痴呆は麻痺などを伴って階段状に進行することもあります。最もよく行われる検査は頭部の画像診断(頭部CTやMRI)です。
重症の場合、家族にとっては記憶障害も困りますが、徘徊、夜間せん妄、妄想などの行動・心理症状が大きな負担になります。自動車の運転や財産の運用等も問題となります。家庭での介護が困難な場合には、施設入所も考慮しなくてはなりません。
アルツハイマー病およびレビー小体型痴呆の場合はまず、精神的ケアや環境の整備などの非薬物療法を行うことが大切です。精神的ケアとしては行動介護ケア、感情・感覚介護ケア、認知介護ケア、刺激介護ケアなどがあります。
脳血管性痴呆では危険因子がある時は危険因子を除去して、ボケの進行を防止します。その他の痴呆ではボケの原因を探して、原因治療に努めます。アルツハイマー病やレビー小体型痴呆には認知機能改善のためコリンエステラーゼ阻害薬ドネペジル(アリセプト)を試みますが、1/3の症例に効果が認められます。
妄想、徘徊や暴力などの行動・心理症状がある場合は、クエチアピン(セロクエル)などの非定型的神経遮断薬を使用することがあります。抑うつ状態や不眠がみられる場合には、トラゾドン(レスリン、デジレル)などの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が用いられます。レビー小体型痴呆で固縮などのパーキンソン病様症状が認められる時には、レボドパなどの抗パーキンソン病薬を使用されます。
認知症の治療は困難ですが、痴呆は治らないと放置することなく、介護など非薬物療法を活用することが大切です。介護保険制度なども上手に利用して、患者や家族がより良い日常生活を送れるような計画を立てる必要があります。
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