病気の予防

ー3段階の予防ー

平成20年4月3日発行



 病気を治す「治療医学」に対して、病気を予防するのが「予防医学」です。狭義には、予防医学とは、病気にならないように未然に防ぐ医学といえます。食事、運動、睡眠、禁煙など日常の生活習慣を正し、病気にならない身体作りが予防医学です。

 現在、日本人の3大死亡原因となっている、がん、心疾患、脳卒中などの生活習慣病の治療法は大きな進歩を遂げていますが、まだ根治療法は確立していません。従って、これらの病気に罹らないよう、日頃から予防を心がけることが大切です。

 より広い意味での予防医学は、病気を予防するだけではなく、傷害防止、寿命の延長、身体的・精神的健康の増進を目的としています。すなわち、病気を未然に防ぐだけではなく、病気の進展を抑え遅らせ、再発を防止することも予防であるとされています。

 病気を起こす要因は、大別して次の3つからなります。1.環境的要因、すなわち外部環境で、これは本人が変えるのが困難なものです。2.生物学的環境、すなわち生活習慣で、これは本人が変えることが出来るものです。3.遺伝的要因、これは本人が変えることが出来ないものです。病気を起こすこれらの要因の寄与する割合は、個人によって異なります。従って、「生活習慣病」も生活習慣のみによって引き起こされる病気ではないことを理解しておくことが大切です。

  これまでの疾病対策の大部分は、結核をはじめとする感染症対策でありましたが、今日では、死因や病気の大半が生活習慣に起因する病気、すなわち生活習慣病が予防対策の対象となってきました。すなわち、外的環境の改善よりも、個人の生活習慣そのものの改善が病気の発生を低減させるためにより重要となって来ました。

 予防医学は、ハーバード大学教授らにより次の3段階に分類されています。

○第一次予防:病気の予防または特殊予防対策
 健康な時期に、栄養・運動・休養など生活習慣の改善、生活環境の改善、健康教育などにより健康増進を図り、さらに予防接種による疾病の発生予防と事故防止による傷害の発生を防止します。

○第二次予防:病気の早期発見、早期治療
 健診・検診を積極的に受診し、病気と診断されたらすぐに治療にかかります。すなわち、不幸にして発生した疾病や傷害を検診等によって早期に発見し、さらに早期に適切な治療や保健指導などの医療と合併症対策により、疾病の進行を遅らせ、疾病や傷害の重症化と合併症を予防し、後遺症を軽くします。

○第三次予防:病気により生活の質を下げない
 治療の過程において保健指導やリハビリテーションによる機能回復を図るなど、QOL(Quality of Life=生活の質)に配慮することによって再発防止や社会復帰のための対策を講ずることです。

 日本では、これまで一次予防、二次予防が、公的な保健活動として実践され、多大な成果をあげてきました。しかし、予防の3段階すべてを実践するためには、これからは医学以外に保健学、栄養学、看護学、教育学、心理学など多くの分野との連携の下に行わなければならないと思われます。

 西洋医学は二次予防に優れています。代替医療には、いかがわしいものもありますが、多くは、その人の自然治癒力、免疫力を高め生命力を強化するのに有用で、一次予防、三次予防に優れています。病気の予防に対しは、西洋医学との相補療法で効果を出せるものと思われます。

 医学の流れは「治療」から「予防」へと変わりつつあり、発病前の予防のみならず、発病後に行う治療医学においても予防が求められます。今後の予防医学の実践には西洋医学だけでなく代替医療を活用し、相互補完することが重要になってくるものと思われます。

 高齢社会に突入した日本では、高齢者の増加に伴い医療費が増大し、国家財政が破綻するようなことになれば、健康保険そのものも破綻するかも知れません。今後、健康保険の自己負担も、さらに増えるものと思われます。本来、健康は自己責任の上に成り立つものと考えれば、いよいよ予防医学が重要となってきます。代替医療としての機能性健康食品のほとんどは保険適用されませんので、予防医学といっても、自らの健康は自ら守るためには個人の財政的負担を覚悟しなければなりません。 

 西洋医学の進歩で、新しい治療法、治療薬などが開発されてはいますが、まだ慢性疾患や難病の多くの病気を救えないのが現状で、治療医学重視の時代から予防医学へと移りつつあります。これは日本だけの特別な事情によるものではなく、世界の趨勢となるものと思われます。

 食生活は健康を考える上で基本中の基本で、バランスの良い食事が大切です。また、過剰なストレス、喫煙、不規則な生活、運動不足、睡眠不足などの乱れた生活習慣を正すことも病気を未然に防ぐことにつながります。

 病気の予防を目的に「健診」と「検診」の2つが行われますが、その意味するところは異なります。「健診」とは、正常の確認、病気のリスクの発見のために行われるもので、「人間ドック」も、主として生活習慣を改善し、健康増進を図り、病気の発生を防ぐ一次予防に主眼が置かれています。これに対し、「検診」は、病気を早期に発見し、早期に治療し、病気による死亡率を減少させ、生活の質の向上を図る二次予防がねらいです。

 これまでの“健康管理”は、健康のリスク管理で、病気が起こってからの初期対策でしたが、今後はリスクそのものを回避する一次予防が重要になってきます。


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