/滅びし者へ/ 

神の思し召し 


(1999年3月 高知競馬場)

「いまから休ませてもらいます」

私は、時間単位で休暇が取れる、気楽な月給取りなのだ。さて、休んだのは3月30日(火)の午後2時から。もちろん、日本選手権競輪の優勝戦のためなのだ。契約してる駐車場に向かう。場所は、高知競輪場のすぐ横。でも、今は競輪場は改築中で、車券は売ってない。穴場は、高知競馬場だ。

なんとおおお、車を出そうにも二重駐車で出せないではないか。繰り返すが、俺の通勤用の駐車場は、高知競輪場の横にある。趣味と実益と仕事を兼ねた、究極の場所に。言いかえれば、それは高知市営球場の横でもある。春の高知高校野球が開催されていた。野球客か?。名古屋ナンバーのセリカだ。数発腹立ち紛れに蹴りを入れるが動くはずもなし。どうしてくれる。大家の家に行くがガキが出てきて、話にならん。どうする。窓を割る度胸もなし。俺の金古が優勝したら、どうしてくれる。球場にとって返して、切符きりをしていた高校生に呼び出しを命じる。入場料をとっている、高校生のクラブ活動に、高校生を使ってだ。あこぎじゃ。どうしてくれる、電話には百枚も残りがない。放送があった。でも来ない。遅い。どうしてくれる。

来た。
「このボケがあ。どこにとめちゅうがなああ」
おとなしい私には似つかわしくない言葉を吐いてしまう。殴りかかったりはしなかった。相手は女だった。

「あなたは野球関係者ですか」だってええ。アホか。俺は競輪関係者だ。しかも大切な。
「はよ動かせ」

冷静になり車中で考える。今日は、やはり金古で買ってはいけないということではないか。神様の思し召しではないか。いや、これを乗り越えてこそ、金古での大勝利があるのではないか。どっちなのだ。
第11R 優勝戦    
東出  剛(千葉54)
小嶋 敬二(石川74)
神山雄一郎(栃木61)
小川  巧(岡山57)
金古 将人(青森67)
十文字貴信(茨城75)
鈴木  誠(千葉55)
浜口 高彰(岐阜59)
児玉 広志(香川66)
 
競馬場に着いた。10レース締め切り。馬淵−山田。ええ配当じゃな。でも、俺には関係ない。優勝戦だけで勝負。金古のオッズ。安い〜。配当に惹かれて急遽小嶋に変更。小嶋−小川とひねくって本線。スジの浜口と力の金古、神山に。

俺は神山の頭と見た。確かに。でも信じたかった、信じたかった、あのガッツポーズを。信じたかった。



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