| /滅びし者へ/ |
(1994年12月 高知競輪場)
豚が私を見つめていた。少し恨めしそうな視線で。
名残惜しいが死んでもらう。一発目をその頭蓋に見舞った。そして二発目の胴体への攻撃でついに豚はその内蔵物を辺りにぶちまけながらこと切れた。五百円玉を筆頭に、私の一年間のささやかな積み重ねの成果である。
まず、お金をまとめるために近所のパチンコ店へと向かう。競輪場でジャラジャラ鳴るお金を扱うのは面倒なものである。そして、予定通り硬貨の数を減らして高知競輪場へ乗り込んだ。ただ、紙幣が増えていないことだけが目論みと違ってはいたが・・。
うし君は、楽しそうに私のポケットにお金をねじ込みながら車券を買っている。私のほうは、8R、9Rと抜け目が続く。いよいよ最終レースだ。
近況今ひとつの三宅は直線まで。三番手から児玉が伸びて来る。ここ高知でも奴は全く信用されていないのか好配当だ。3−1,3−2,3−6で。
S級特選 1 1 東出 剛(千葉54) 2 2 金田健一郎(大阪60) 3 3 児玉 広志(香川66) 4 4 佐々木浩三(佐賀50) 5 森田 進(埼玉57) 5 6 恩田 繁雄(東京41) 7 三宅 伸(岡山64) 6 8 菊池 仁志(愛媛47) 9 紫原 政文(福岡61)
三宅は直線で失速したように見えた。とんでもない場所で見ていたため、着順が全くわからない。だが、児玉は位置も良かったし、そこそこ勝負にはなっているはずだ。
周りの連中は、G線を確認するためにモニターへと急ぐ。だが、私たちは動かない。そして耳を両手で塞ぐ。これぞ、よさこいラインの最終兵器『車券の寿命延長戦術』である。客の姿が少なくなった。そろそろ良いころだろうと、両手を戻す。さあ、決定だ。
『一着8番 二着3番 ふたせんろっぴゃくじゅうえん〜』
・あちこちで、ボランティアだろうか道路掃除をしている人がいた。
・競輪場のとなりのグラウンドでは少年が真剣なまなざしでボールを追っていた。
・街にあふれた買い物客は、忙しげでそして楽しそうだった。
・どぎつくライトアップされた夜の街角は、紅潮した若者で溢れるのだろう。
・ジングルベルが鳴っている。
俺は一体何をやっているのだ!!!
ヤサに帰って、一念発起、身の回りの整理を決心する。まずは、小倉から帰ったままほったらかしにしているカバンを。と、その底に紙幣が一枚へばりついていた。
明日も行こう。そして、待っていろ立川の魑魅魍魎どもよ!!
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