| /滅びし者へ/ |
(1994年1月観音寺競輪場)
冬枯れた空がバンクを覆っていた。三角後方の空を見上げると、近くの海から飛び立ったものであろう水鳥の群れが、折からの強風にあおられながら非線形の航跡を描いていた。曇った空との境を曖昧にして、バック後方の名も知らぬ山々は静かだ。
私 『こりゃあ2−6でええろう。押さえても2−3。』
うし 『おうよ。あと2−4でも買うちょいたら完璧やろ。』
両名 『まあいづれにせよ連復のこんなところは買いじゃない。』観音寺競輪第4Rは、はたして2−6で決まった。
私 『まあ、800円ばあ(くらい)か。』
うし 『そんなもんやろ。』
決定 『連勝式2と6の組 いっせんごひゃくえ〜ん。』私 『ひえええ。オッズを見ちょったら。』
うし 『痛〜いね。』
KAGI 『まあチクッとした。どうせ買ってもちょとだけやった。』
両名 『よし、戒めのために冷まそう』とうとう小雪が舞いだした誰もいないスタンドで、二人は次のレースまで座り続けた。修行僧のように。
第8R S級準優 1 1 佐々木浩三(佐賀) 2 2 増子 政明(茨城) 3 3 中武 克雄(大阪) 4 4 石村 英之(香川) 5 木元 敏郎(大分) 5 6 田前 義守(三重) 7 後閑 信一(群馬) 6 8 宇都宮 聡(広島) 9 北沢 勝弘(栃木) よし、本命車券で行く。復調気配の後閑と捲り好調の中武の裏表。宇都宮の先行をこの両者で捲り合戦だろう。九州両者がいたずらしそうであり筋では入らないと見た。中武マークが後閑と同枠であるため3−5が一番人気だ。当然5−3で勝負。裏は元取り。
打鐘4角からカマシて後ろをブッ千切った後閑。直線で急ブレーキ。一着は後方から捲った中武。二着は第二先行になりながらも追い込んだ宇都宮。三着は中武マークの田前。2370円。
9R S級準優 1 1 梨野 英人(香川) 2 2 新藤 敦(神奈) 3 3 東出 剛(千葉) 4 4 三谷 典正(滋賀) 5 工 正信(広島) 5 6 中田 穀彦(徳島) 7 小川 博美(福岡) 6 8 大井 啓世(奈良) 9 紫原 政文(福岡) 新藤の出方が分からないので、買うつもりのなかったレース。でもフラフラと根拠もなく2−6,3−6と小張りする。『レースを絞る』とかカッコいいこと言っておいて、やっていることは全然違う。
新藤の逃げに乗った東出が、捲って来た紫原に合わせて一着。紫原が二着で、続いて大井。1620円。
とにかく当たりはいいことだ。払戻し金を全て最終レースに投入。このレースは朝から買い目が決まっている。
10R S級準優 1 1 馬場 圭一(香川) 2 2 萩原 操(三重) 3 3 北川 智博(滋賀) 4 4 高橋 正登(群馬) 5 山下 秀綱(福岡) 5 6 池田 猛(神奈) 7 中沢 孝之(大阪)
6 8 宮下 忠憲(香川) 9 松山 学(神奈) 選手が入場して来た。『中沢あああ』と一こえ声援を送る。昨年暮れの立川において、松村信定に、沢田、横田、紺野の69期を破る力を与え、滝沢正光に吉岡−井上のラインを撃破する技を授けたありがたい天使の声援を。
私『追い上げえええ』
私『そこで叩けえええ』
私『引け引けすぐに引けええええ』
私『踏めええええ』
私『よっしゃあ、どっちも競り負けるなあ』
私『ほい!!捲れえええ』まるで私の声が聞こえたかの如くレースが動く。ああ快感。
人気先行の山下の後位で四国と南関が競り合う。それをじっくり眺めた北川が中沢と萩原を連れて2角から捲り上げる。
私『きたがわあ〜、このパターンやったらそこそこ届くやろうがああ!!!』
北川が捲りきった。
客 『これは、3−5(北川−中沢)かあああ』
私 『甘ああい。ここから突き抜けええ!!ズブズブまでこおおい!!!!』
ズブッ
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