/滅びし者へ/ 

寒いねえ身も心も(滅度:☆☆☆)


(1994年1月観音寺競輪場)


 冬枯れた空がバンクを覆っていた。

 三角後方の空を見上げると、近くの海から飛び立ったものであろう水鳥の群れが、折からの強風にあおられながら非線形の航跡を描いていた。曇った空との境を曖昧にして、バック後方の名も知らぬ山々は静かだ。

私 『こりゃあ2−6でええろう。押さえても2−3。』
うし 『おうよ。あと2−4でも買うちょいたら完璧やろ。』
両名 『まあいづれにせよ連復のこんなところは買いじゃない。』

 観音寺競輪第4Rは、はたして2−6で決まった。

私 『まあ、800円ばあ(くらい)か。』
うし 『そんなもんやろ。』
決定 『連勝式2と6の組 いっせんごひゃくえ〜ん。』

私 『ひえええ。オッズを見ちょったら。』
うし 『痛〜いね。』
KAGI 『まあチクッとした。どうせ買ってもちょとだけやった。』
両名 『よし、戒めのために冷まそう』

 とうとう小雪が舞いだした誰もいないスタンドで、二人は次のレースまで座り続けた。修行僧のように。

第8R S級準優 
佐々木浩三(佐賀)
増子 政明(茨城)
中武 克雄(大阪)
石村 英之(香川)
木元 敏郎(大分)
田前 義守(三重)
後閑 信一(群馬)
宇都宮 聡(広島)
北沢 勝弘(栃木)
 

 よし、本命車券で行く。復調気配の後閑と捲り好調の中武の裏表。宇都宮の先行をこの両者で捲り合戦だろう。九州両者がいたずらしそうであり筋では入らないと見た。中武マークが後閑と同枠であるため3−5が一番人気だ。当然5−3で勝負。裏は元取り。

 打鐘4角からカマシて後ろをブッ千切った後閑。直線で急ブレーキ。一着は後方から捲った中武。二着は第二先行になりながらも追い込んだ宇都宮。三着は中武マークの田前。2370円。


9R S級準優    
梨野 英人(香川)
新藤  敦(神奈)
東出  剛(千葉)
三谷 典正(滋賀)
工  正信(広島)
中田 穀彦(徳島)
小川 博美(福岡)
大井 啓世(奈良)
紫原 政文(福岡)
 

 新藤の出方が分からないので、買うつもりのなかったレース。でもフラフラと根拠もなく2−6,3−6と小張りする。『レースを絞る』とかカッコいいこと言っておいて、やっていることは全然違う。

 新藤の逃げに乗った東出が、捲って来た紫原に合わせて一着。紫原が二着で、続いて大井。1620円。

 とにかく当たりはいいことだ。払戻し金を全て最終レースに投入。このレースは朝から買い目が決まっている。



10R S級準優    
馬場 圭一(香川)
萩原  操(三重)
北川 智博(滋賀)
高橋 正登(群馬)
山下 秀綱(福岡)
池田  猛(神奈)
中沢 孝之(大阪)
宮下 忠憲(香川)
松山  学(神奈)
 

 選手が入場して来た。『中沢あああ』と一こえ声援を送る。昨年暮れの立川において、松村信定に、沢田、横田、紺野の69期を破る力を与え、滝沢正光に吉岡−井上のラインを撃破する技を授けたありがたい天使の声援を。

私『追い上げえええ』
私『そこで叩けえええ』
私『引け引けすぐに引けええええ』
私『踏めええええ』
私『よっしゃあ、どっちも競り負けるなあ』
私『ほい!!捲れえええ』

まるで私の声が聞こえたかの如くレースが動く。ああ快感。

人気先行の山下の後位で四国と南関が競り合う。それをじっくり眺めた北川が中沢と萩原を連れて2角から捲り上げる。

私『きたがわあ〜、このパターンやったらそこそこ届くやろうがああ!!!』

 北川が捲りきった。

客 『これは、3−5(北川−中沢)かあああ』
私 『甘ああい。ここから突き抜けええ!!ズブズブまでこおおい!!!!』

ズブッ

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